『北海道中エルボーバイシクル』 マンノン

 時は平成お江戸下町。デデンとおっ立つスカイツリー。そのふもとにあります東京ソラマチ。東武スカイツリーラインスカイツリー駅徒歩一分。走れば三十秒にありますムーミンハウスカフェから始まります。むさい男二人が頭寄せ合いなにやら密談をしております。

「というわけでここがムーミンカフェだよ秋月君」「なるほどこれがムーミンカフェですかいマンノンさん」「今日来てもらったのは他でもない。今度書き物をすることになってね」「へぇ、そりゃまたどんな」「それが方位磁石をテーマにした書き物なんだよ」「そりゃまた変わってますな」「うむ、それで……おっと珈琲がきた。まずは頂こうじゃないか」「そうですね、まずは乾杯!」

 ムーミンカフェ名物のブルーベリー珈琲だ。その名の通りブルーベリーの香りがする。さらにここの名物のニョロニョロドーナツは細長いドーナツでこれにもまたブルーベリーが練り込まれている。ムーミン発祥の地であるフィンランドではブルーベリーが特産らしい。香り高いブルーベリー珈琲をいただきながらニョロニョロドーナツを頬張る。至福だ。

「うん、うまいうまい」「やはりドーナツと珈琲はあいますなぁ」「フィンランド料理も興味はあるが今日は止めておこう」「なんだか旨そうではありますね」「ムーミンパパもたぶん勧めるだろうが」「変わってますよね、空席にムーミンパパ座らせてくれるのは」

 この店では空いた席にムーミン一家の人形を座らせてくれるサービスがある。いま相席してくれているのはムーミンパパであった。

「しかし男二人の席にムーミンパパではむさむさしいね」「スカイツリーが634なだけにむさむさしいですか」「どうせならフローレンかママさんのが良かったか。華がないな!」「まぁまぁ今日はいいじゃないですか、むさむさしくいきましょう」「武蔵だけに、なんつって」「親父しかいない親父ギャグ。今日は荒れますね」

 男二人、いや三人が頭を寄せ合ってのむさい応酬。ドーナツを食べ終えると本題へと入っていきます。

「というわけで本題だが方位磁石の話なわけだ」「なんでもいいと言われると困りますね」「ところで秋月くんは方位磁石は持ってるかい」「えっ、普通持ってる人ってあまりいないんじゃないですかねぇ」「そうなんだよねぇ。常に持ち歩いてる人とかはあまり見たことないねぇ。でだ、どこで手に入れられるかね」「あー、普通の店ではあまり扱ってなさそうですね。コンビニもさすがにないだろうな」「山登りの人とかか。山岳系のアイテム扱ってる所とか」「あ、あそこならあるんじゃないですか。東急ハンズ」「おお、その手があったか! ではまずは見つける所から話にしてと……」

 東急ハンズ。言わずと知れた雑貨から日用品から実用品まで実に多彩な商品を置いている店である。日曜大工用品や文房具、地震対策グッズに節水シャワーヘッド。来る者を様々な品で誘惑するショップであった。

「ここからだと北千住が一番近いな、どうだね秋月くん。今日はつきあってもらえるかね」「しょうがないですね、マンノンさんの頼みならついて行きましょう、どこまでも」「そうと決まったら善は急げだ。さっそく東武スカイツリーラインで向かおう」「合点」


――続きは本誌でお楽しみください――

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